2016/02/27

甲斐バンド #2 1978年初夏

今回は甲斐バンドの名アルバム「誘惑」のレコーディングのお話を少し。

++++++++++++++++++++++++++++++++

1978年の初夏、甲斐バンド5枚目のオリジナルアルバム「誘惑」のレコーディングが始まった。
レコーディングは主に箱根のロックウェル・スタジオと、溜池の東芝EMIスタジオの二カ所で行われた。

箱根で合宿をしながら、ベーシックなパートのレコーディングをして、残りを東京のスタジオでレコーディングした。

この頃は今と違って、機材もまだ16チャンネルのレコーダーの時代だった。当然のことながら、磁気テープに音を記録していくアナログ方式の録音である。しかも現在のレコーディングのように、チャンネルが無限にあるわけではなかったので、録音もいろいろと工夫しながら行っていた。

ところでこのアルバムには、曲ごとのミュージシャンのクレジットが載っていない。
甲斐バンドはその名の通りバンドだから、全曲自分達で演奏しているのは言うまでもないが、それ以外のゲストミュージシャンのクレジットはまとめて掲載されていた。

甲斐バンドのメンバー以外に、誘惑のレコーディングに参加したミュージシャンは、ギター田中一郎、キーボード西本明、乾裕樹、板倉雅一。

ぼくがレコーディングに参加した曲は「バランタインの日々」と「二色の灯」を除く全曲。その中でも特に思い出深い曲が「嵐の季節」と「シネマ・クラブ」の二曲だった。

「シネマ・クラブ」のピアノは、ぼくが演奏しているのだが、甲斐さんからイントロの部分を、Barでピアノを弾いているようなイメージで弾いて欲しいというリクエストがあって、ほぼ即興であのようなイントロになった。

ピアノの音のバックに人々のざわめきのような音が入ってるが、これはぼくと甲斐バンドの舞台監督だったI氏の二人で、SONYのデンスケ(テープレコーダー)をかかえて、六本木のレストランバーで録音したものである。

「嵐の季節」では、当時まだ珍しかったポリフォニック・シンセサイザー(和音が出るシンセ。この頃はまだ単音しか出ないシンセが多かった。)のPoly-Moogを使ってブラスの音を鳴らしたり、フェンダー・ローズピアノをレスリースピーカーに通して弾いたり、結構実験的なこともやった。

そしてぼくはキーボードだけでなく、ボーカルやコーラスもやらせてもらった。

「嵐の季節」のサビの部分は、ドラムの松藤さん、ベースの長岡さんと一緒にぼくも歌っているのだが、マイクの立ち位置の関係からか、ぼくの声が一番大きく録音されている。
甲斐さんの野太く迫力のあるボーカルと、松藤さん、長岡さん、ぼくの青年合唱団のようなボーカルとの掛け合いが何とも対照的で面白い。

曲ごとにおけるキーボードとコーラスのクレジットは以下の通り。(Recorded atの表記は、キーボードの録音を行ったスタジオ。)
ちなみにコーラスは松藤さん、長岡さんとぼくの三人で歌っている。

1.カーテン(Recorded at 箱根ロックウェルスタジオ)
Hammond Organ:板倉雅一

2.ちんぴら(Recorded at 東芝EMIスタジオ)
Acoustic Piano:西本明
Hammond Organ&Chorus:板倉雅一

3.悲しき愛奴(サーファー)(Recorded at 東芝EMIスタジオ)
Fender Rhodes Piano,Synthesizer:板倉雅一

4.からくり(Recorded at 箱根ロックウェルスタジオ)
Fender Rhodes Piano:乾裕樹
Hammond Organ&Chorus:板倉雅一

5. 翼あるもの(Recorded at 箱根ロックウェルスタジオ)
Acoustic Piano,Fender Rhodes Piano,Synthesizer:板倉雅一
Hammond Organ:西本明

6.嵐の季節(Recorded at 箱根ロックウェルスタジオ)
Acoustic Piano,Fender Rhodes Piano,
Synthesizer&Vocal:板倉雅一

9.シネマ・クラブ(Recorded at 東芝EMIスタジオ)
Acoustic Piano&Chorus:板倉雅一

10.LADY(Recorded at 箱根ロックウェルスタジオ)
Acoustic Piano:西本明
Fender Rhodes Piano:板倉雅一

  •  箱根ロックウェルスタジオでのレコーディング風景。西本明くんと。