2016/04/11

浜田省吾 #12 Sand Castle

1983年12月1日に浜田省吾さんのバラードアルバム『Sand Castle』がリリースされました。
今回はそのデモテープ録音の話です。

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1983年の浜田省吾の春〜夏のツアーは、8月13日に行われた福岡海の中道海浜公園でのイベントを挟んで、8月31日の青森市民会館まで続いた。春〜夏のツアーだけでもイベントも入れて合計72回のコンサート。
秋のツアーも同じぐらいの本数だった。
とにかくこの年はとにかく滅茶苦茶コンサートをやった記憶しかない。

秋のツアーまでの短いオフの間に、ぼくは海外旅行に出かけたりして英気を養った。
旅行から戻るとすぐに尾崎豊という新人のレコーディングがあった。
尾崎くんの話はまた別の機会に詳しく。

そして秋のツアーのリハーサルの合間に、浜田さんのバラードアルバムのためのデモテープ録りが行われた。
過去の作品からバラード曲をチョイスし、リメイクして一枚のアルバムにするという企画だった。
アレンジは佐藤準さんが担当することになっていた。

そこで準さんに渡すためのデモテープを、ぼくと浜田さんの二人だけで録音することになった。
準さんに元のアレンジのままの音資料を渡すと、余計な先入観が入ってアレンジしづらくなるのでは?との配慮からだった。

ぼくと浜田さんは新宿の小さなスタジオでレコーディングに臨んだ。
なるべくシンプルにしようということで、使う楽器は浜田さん自らが弾くマーティンD-28と、ぼくが弾くヤマハCP-70とフェンダー・ローズピアノだけ。

マーティンD-28は言わずと知れたアコースティックギターの名器で、この日使用したのは浜田さん所有のもの。
ヤマハCP-70はエレクトリック・グランドピアノで、当時オフコースの小田さんや八神純子さん等も使用していた。
フェンダー・ローズピアノはエレクトリック・ピアノの代名詞のような楽器で、内外問わず多くのミュージシャンが使用していた。

録音はボーカルも含めた一発録り。間違えたら最初からやり直すという超アナログ方式で行われた。

あくまでもデモテープなので、音質云々よりも雰囲気重視でレコーディングは行われた。
この時録音した曲は以下の通り。

1.君に会うまでは
2.君の微笑み
3.散歩道
4.いつわりの日々
5.愛という名のもとに
6.朝のシルエット
7.丘の上の愛
8.片想い
9.陽のあたる場所
10.愛しい人へ

驚いたことに、後に『Sand Castle』としてリリースされたものと曲目、曲順まで一緒である。
ということはこのデモテープ録りの時点で、すでに曲順まで決まっていたということになる。

レコーディングは数時間で終了した。
発表されるモノではないため、ぼくも浜田さんも結構リラックスしながらレコーディングした。

浜田さんがギターを弾かないで、ぼくの弾くピアノ一本だけでレコーディングした曲も何曲かあった。
そんな曲の時は浜田さんが歌いながら膝でリズムを叩いて、即席のパーカッション代わりにしたりもした。それがまた恐ろしく良い雰囲気を醸し出していた。

逆にピアノが入らないで、浜田さんが弾くギター一本だけで歌われた曲もあった。
また或る曲の間奏の部分では、浜田さんがハミングでメロディを奏でたりもした。

今回改めて久しぶりにその時のテープを聴いてみた。
テープには1983年の、あの時の空気感までもがパッケージされたまま大切に録音されていた。
それにしてもなんて生々しくて、なんて瑞々しいんだろう。テープから流れてくる音は、まさにエバーグリーンの輝きを放っていた。

聴いていて当時のことをいろいろと思い出した。
また余分な音が入っていない分、むき出しのボーカル、そしてギターとピアノだけのシンプルな演奏が、よりいっそう楽曲の素晴らしさを際立たせていて、聴いている内に不覚にも感涙してしまった。

自分で言うのも何だが、こんな素晴らしいデモが公表されていないことが至極残念。
『Sand Castle』がリマスターとかされた暁には、是非ともボーナストラックとして収録して欲しいものである。が、おそらく、いや絶対ムリだろうな(笑)

たぶん永久に世に出ることは無いであろう、裏Sand Castleとも言えるこの二人だけのセッションテープは、ぼくの大切な宝物である。

二人だけでレコーディングしたSand Castleのデモテープ。