2016/04/24

浜田省吾#16 怪奇現象?

浜田省吾1982年の春のツアーで起きたちょっとコワい話です。

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1982年6月15日松山市民会館を皮切りに、浜田省吾の四国〜中国〜山陰〜大阪と廻る長い旅がスタートした。
この時点で82年春のツアーは約50本のコンサートを消化して、残りはあと3分の1ぐらいの本数になっていた。

松山から始まったツアーのスケジュールは以下の通り。

6/15 松山市民会館
6/16 高知県民文化会館
6/17 徳島文化センター
6/19 倉敷市民会館
6/20 広島郵便貯金会館
6/22 三原市文化会館
6/23 山口市民会館
6/24 岩国市民会館
6/26 島根県民会館
6/27 鳥取市民会館
6/29 島根県民会館
7/1 大阪フェスティバルホール

17泊18日の長い旅だった。

初日の松山公演を終え、この日は疲れていたこともあって、ホテルのレストランで食事を済ませたぼく達は早々に各自の部屋に戻った。
ぼくも部屋に戻って、シャワーを浴びるために着替えをバッグから取り出そうと思って腰を屈めた時、どこからかヘンな音がすることに気がついた。

何かパチン!という手を叩いたときのような音がどこからか聞こえてくる。
部屋のドアを閉め忘れたため、廊下から聞こえてくる音なのかな?と思ってドアを確認すると、部屋のドアは確かに閉まっている。
気のせいかと思い、再び鞄から着替えを出そうとすると、またパチン!という音が。

あれっ?ヘンだな?と思い、今度はバスルームの中を確認してみる。当然のごとくそこには誰もいない。
部屋の窓が開いているのかと思って窓も確認してみる。キッチリ閉まっている。
うーん、何だろ?疲れているせいで幻聴が聞こえたのかと思い、あまり気にしないことにした。

ひとまずシャワーを浴びるのは後回しにして、テレビをつけようと壁に近づいた時にまたもパチン!という音が今度はハッキリと聞こえた。
「ん??何か壁のあたりから聞こえたぞ。」ぼくは独り言を言いながら、壁に耳をあててみた。
「パチンっ!!」壁の中からすごく大きな音が聞こえた。実際は耳を壁にあてていたため、すごく大きく聞こえたような気がしただけだった。
音は聞こえたり止んだり、不規則に繰り返されていた。

ぼくは何だか気味が悪くなって、町支さんと江澤くんに部屋に来てもらった。
「ねぇ、さっきかヘンな音が聞こえて気味が悪いんだけど、聞いてくんない?」
ぼくは町支さんに言った。
「またぁ、そんなこと言って脅かそうとしてるんでしょ。」町支さんは半分以上信じていない様子だった。
「イタさぁ、疲れてて耳鳴りでもしてるんじゃないの?」江澤くんも信じていない様子。

「とにかく音がするんだ。聞いてみてよ」ぼくは二人に言った。
しばらくするとまた例の「パチン!」が聞こえて来た。「ん?何か音がした。」江澤くんが不審そうな顔をした。
再び「パチン!」「えっ?何か聞こえたねぇ」町支さんも不思議そうな顔をしている。
「でしょでしょ!確かに聞こえたよね!なんか壁の中から聞こえて来るんだけど。」
すると今度は連続で「パチン!」が聞こえて来た。

さすがにみんなこれはヘンだ、と思い始めていた。
すると町支さんが一言「これって、ひょっとしたらラップ現象かも。」
「エェ〜〜!!ラップ現象ぉ〜?マジですか、マヂですかぁぁぁ!!」ぼくは急に言い知れぬ恐怖を感じて叫んだ。
「うん、そうかもしれない。オレもなんかの本で読んだことあるわ。」追い打ちを掛けるように江澤くんが言った。
「やめてよー!オレ怖くて眠れないよー!」ぼくはホントに怖くてたまらなくなって来た。

臆病なことにかけては世界でも屈指の存在だと自負しているぼくは、もう一刻も早くこの部屋から逃げ出したい衝動にかられていた。

そんなことを言ってる間にも例の音は続いている。
町支さんと江澤くんは「フロントに電話して確認してもらったほうが良いかもよ。オレ風呂入るから。じゃあねー。」とかなんとか言って、さっさと自分の部屋に帰ってしまった。

再び誰もいなくなった部屋で例の音は続いている。
ぼくは速攻でフロントに電話した。「あのぅ、部屋からヘンな音がですね、聞こえてですねぇ、聞こえるとですたい。」ぼくはコワさのあまり、何故かおかしな九州弁になってしまった。

フロントの人に確認してもらうと、確かに音は聞こえるけれど別に不審な音ではないのでは?とのなんだかやる気の無さ全開の返事。
でももうこの部屋に居るのは絶対にイヤだったぼくは、部屋を変えてもらうことにした。
ところが生憎この日はシングルの部屋が満室で、空いている部屋は四人部屋のファミリータイプの部屋しか用意出来ないとのことだった。

ファミリータイプだろうがファミリーレストランだろうが、パートリッジ・ファミリーだろうが、もう何でもいいから部屋変えて!
無理矢理お願いして、どうにかぼくは四人部屋に移った。
やっとこさ恐怖から解放されたぼくは、ファミリータイプの部屋に入ると改めて部屋の中を見渡した。うなぎの寝床のような横長の部屋にベッドが四つ置かれていた。

「ひ、広い…。」

ここで一人で寝るの?寝るの??寝るのぉぉぉ???…絶対に無理!

臆病なぼくは今度は別の恐怖に襲われた。
四つ並んだベッドが棺桶のように見えて来て、もう居ても経ってもいられなくなったぼくは、江澤くんの部屋に電話をかけた。

「オメツ(江澤くんのあだ名)さぁ、悪いんだけど今夜オレの部屋に泊まってくれないかなぁ?」おそるおそるぼくは江澤くんに言った。
「え〜〜!なんで?イヤだよオレ。だいいち面倒くさいし。」江澤くんは本当に嫌そうに言った。
「部屋変えてもらったのは良いんだけど、広すぎてコワくて眠れそうもないのよ。お願い!今夜だけオレの部屋に泊まって!」まるで女の子を口説くかのような口調で、ぼくは江澤くんに懇願した。
こうなったら何か何でも口説き落としてみせるぞー!…相手は男であった(笑)

渋る江澤くんをどうにか説得して、この夜は四人部屋に泊まってもらうことにした。
急に安心したぼくはコンサートの疲れもあって、あっという間に深い眠りに落ちて行った。

次の朝、爽快な気分で目覚めると、眠そうな目をした江澤くんがすでに起きていた。
「あれっ?オメツもう起きたの?早いねー。」昨夜の騒動のことなど、どこ吹く風でぼくは言った。
「あのなぁ、オマエ〜殺すぞ。さっさと一人だけ先に寝やがって、オマエのいびきがうるさくて全然眠れなかったじゃねーかよ!」

これ以上無いというくらい、超不機嫌そうな顔で江澤くんは言った。

これがその四人部屋。起きてから江澤くんの機嫌が直ったところで記念に一枚(笑)